10年のボージョレ・ヌーボー
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 食べ物のおいしさを科学的に分析し、マーケティングの視点から開発にかかわり、「味香り戦略研究所」で“味覚参謀”を務める菅慎太郎さんが、流行の食材や味覚のトレンドを語る「味トレンドの隠し味」。第1回は、今年は17日に解禁されるボージョレ・ヌーボーだ。

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 今年もボージョレ・ヌーボーの解禁の日がやってきます。毎年、日付を越える午前0時をもって、「乾杯!」が行われるわけですが、景気の低迷や酒離れなどが進み、毎年イベントも縮小傾向にあるばかり。せっかくの「ハレ」の気分で飲むべきお酒も、どうやら盛り上がりが十分ではなさそうです。そんなボージョレ・ヌーボーをいかに楽しむか。味を専門とする立場から一つ提言をしたいと思います。それは、「ボージョレ・ヌーボーは味わわない」ということ。「おいしい」とか「おいしくない」とかそういう価値観でボージョレ・ヌーボーを見るのではなく、「今年はどういう味か?」。そして、「その味をどう感じるか?」にこそ、着目してほしいと思うのです。

 私も常日ごろ、さまざまな飲料、お酒、食品の官能検査を行い、商品評価をする際、同じ商品の「工場が違うもの」や「経過日数が違うもの」を比べることで、その商品の「可能性」や「変化」をとらえることで、「見えなかった味」や「食べ合わせる味」を発見することがあります。それは「同じ商品を追いかける」ことによってしか分からないことです。ワインは非常に多くの種類があり、品種や原産地や作り手など、すべてを網羅することは、人生を費やしても足りません。ワインの奥深さを目の前にして、自分に合うワインを見つけられないままよりは、「自分はどういう味が好きなのか」、そして「今年のワインはどういうできなのか」。それを、年に1度のこの「ボージョレ・ヌーボー解禁の日」に「確認」してほしいと思うのです。

 やり方は簡単です。毎年「同じ銘柄のボージョレ・ヌーボー」を購入し、飲んでください。年によっての日照りや温度によって味に変化が生まれます。一般的には、気温がそれほど上がらない年は軽め、しっかりと日照りと気温が確保できれば酸味、甘味、ボディー感のあるバランスの良いワインが出来上がります。その変化を「同じワイン」を飲み続けることで感じ取ってほしいのです。無論、ボージョレはガメイ種(赤ワイン)。ワインの中でも酸味が少し強めなので、苦手な人も多いはず。それでも、人は年を取り、食の経験が増すごとに、腐敗の象徴である「酸味」を受け入れ、むしろ「好き」なものに変化していくわけですから、ボージョレ・ヌーボーを飲みながら、「まだ自分自身は若いのかな?」なんて思いながら、新たな食の経験を増やしていくのもよいかもしれません。ボージョレ・ヌーボーは「おいしく飲む」ものではなく、「おいしさを知る」ものとして、今年の解禁を迎えてみてはいかがでしょうか。

 プロフィル

菅慎太郎(かん・しんたろう)

1977年埼玉県生まれ。早大社会科学部卒業。システム会社に勤務するも、趣味の酒と肴(さかな)のマリアージュへのこだわりから現在の会社へ転職。焼酎アドバイザーの資格を持ち、食べ合わせ、飲み合わせの研究を進める一方、マーケティングの経験を生かし、大学での講義や地方での商品開発や地域特産物の発掘、ブラ ンド化を手がける。Foodoga Live!(インターネット生放送)メーンキャスター、キッズデザインパーク講師。日本味育協会認定講師。渋谷珍味研究会顧問。(所属:味香り戦略研究所 味ブランド戦略部“味覚参謀”)